工場夜景ポートレートの撮り方 ― F8〜F11・長秒露光・ストロボで作る非日常の世界

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工場夜景ポートレートの撮り方 ― F8〜F11・長秒露光・ストロボで作る非日常の世界

山口県周南市のコンビナートは、夜になるととても不思議な場所になります。
昼間にはただの巨大な産業地帯だったはずの建造物が、
暗闇をまとった瞬間、まるで別の世界に変わる。

煙突を照らす照明、パイプに絡む光、蒸気が反射する青白い輝き。
それらが混じり合って、人工物であるはずなのに、
どこか生命のような“呼吸”を感じさせる場所になるのです。

そんな工場夜景を背景に、
今回はモデル @levraivert さんをお迎えして、
アート寄りのポートレート撮影を行いました。

そんな「夜の工場」自体を撮るだけなら、実はそれほど難しくありません。
三脚を立てて、絞りを決めて、それに合わせたシャッタースピードで撮れば誰でも雰囲気のある工場夜景が撮れます。

しかしここに人物を入れた瞬間、難易度は一気に跳ね上がります。

背景となる工場はしっかり描写したい。
でも人物はブレずに止めたい。
そして普通の夜景ポートレートのように、人物と背景を両方適正露出で調和させたい。

工場夜景ポートレートが難しい最大の理由はここにあります。

モデル @levraivert    veil(ベール)さんと周南市コンビナートで撮影した実例をもとに、
工場夜景ポートレートを成立させるための設定やライティングの考え方を紹介します。

今回初めて撮影させていただくベールさん。
撮影依頼をいただいたとき、「アート系の作品が好きなんです」と言われたのが印象的でした。

その言葉を聞いたとき、頭の中に最初に浮かんだのが周南コンビナートの夜景でした。

工場夜景はよく撮りに行きます。
けれど“人物”を入れて成立させるとなると、
まったく違う世界が立ち上がってきます。

光の質、露出の組み立て、場所選び、そしてモデルの静止力。
そのすべてが揃ったときにだけ、作品として形になる。

撮影前から少しワクワクしていました。

工場夜景ポートレートが難しい理由

理由1:工場の照明はすべて“持続光

・ナトリウム灯

・LED

・作業灯

・金属の反射

・蒸気の照り返し

など様々な光が存在します。
これらはすべて持続光…
いわゆる定常光あり、スローシャッター中に人物へ当たると「残像ブレ」の原因になります。


残像ブレの例です
綺麗に写ってるように見えますが、ストロボ光の影響が少ない左目辺りから頭部にかけて環境光による残像が出ています。

 

 

理由2:背景の工場はF8〜F11で撮りたい

工場のディテールを綺麗に描くには、
F8〜F11での撮影がベスト です。
しかし絞るほどシャッタースピードは遅くなります。

工場と被写体となるモデルさんの距離が近ければいいのですが、ライティングを使用しての撮影は業務に支障を与える恐れがあるため、離れた所からの撮影が望ましいと筆者は考えています。


f11 SS30秒

理由3:人が止まれるのは1〜2秒

呼吸、わずかな揺れ、寒さなどにより、
人が静止できるのは1〜2秒が限界です。


作例のモデルがオッサンですいません
被写体を照らしているのはLEDライト、絞りf11 ss4秒 ISO1600での撮影ですが、なるだけ動かないように努めましたが、やはり顔がぶれています。

背景描写は「F8〜F11 × ISO × SS」で作る

工場のディテールをしっかり描くため、
絞りは F8〜F11 に固定します。

しかしF11・ISO100では
シャッタースピード20〜30秒 になってしまい、人物は必ずブレます。

そこで重要になるのが ISO です。

ISOを800~3200に上げてSSを2秒以内へ

今回は

ISO:800から3200

シャッタースピード:2秒以内

に調整しました。

今回の相棒Nikon Zf は高感度耐性が高く、ISO3200でも破綻なく写ります。

背景は「ISO × SS」で作る

人物はストロボの“閃光”で止める

1〜2秒では人物は完全には止まりません。
そのため人物の露光はストロボの閃光に任せます。

背景 → SSでじっくり描写

人物 → ストロボ一閃で固定

これが工場夜景ポートレートの基本原理です。

絶対NG:環境光が人物に当たること

工場の光は全て持続光です。
人物に当たるとシャッタースピード2秒の間に残像を描きます。

➡ ストロボで止めても人物がブレる という現象が起きます。

対策:環境光ゼロの位置に立ってもらう

街灯の影、反射光の少ない位置など
「ストロボ光だけが当たる場所」を探すことが何より重要です。

実際の撮影では、立ち位置の微調整を数十センチ単位で行いました。

ISOを上げるとストロボが明るくなりすぎる問題

ISO感度を上げると、
ストロボ光まで強く写ってしまいます。

工場夜景ポートレートも含め夜景ポートレートではよく遭遇する問題です。

光量を弱める実践的な方法

① ソフトボックスの“縁光”を使う

ソフトボックスを正面から当てない

端(エッジ)の柔らかい光だけ使う

距離を離して光を弱める(被写体からあまり離すと、光は弱くなりますが光の質が硬くなるのでほどほどに)

② 白色の養生テープを発光面に貼る(減光)

ソフトボックス内側のディフューザーに
白色の養生テープを1〜2枚貼ることでストロボ光を物理的に減光できます。

色が転びにくい

減光量を調整できる

現場での即応性が高いなどのメリットがあります。

 

③ ストロボを背後へ置き、リムライトとして使う

前から照らすと明るすぎる場合、
背面から輪郭を光らせることで自然な明るさになります。

今回は前後からストロボを使用しました。

 

星空ポートレートとの決定的な違い

夜の人物撮影という点は似ていますが、撮影体系はまったくの別物です。

星空ポートレート

– 開放F値 – 環境光がほぼゼロ – 10〜20秒露光-露光中に人物がブレにくい

工場夜景ポートレート

– F8〜F11 – 環境光が多い – 人物は1〜2秒が限界 – 露光中に環境光で人物がブレる

工場夜景の方が圧倒的に難易度が高い理由がここにあります。

モデル veilさんの協力で成立した撮影

立ち位置、姿勢の微調整、
環境光を避けるための細かい対応など、
モデルさんの協力があって撮影が成立しました。

2秒間の静止は簡単ではなく、
その集中力によって写真の完成度が大きく向上しました。

しかも、背景になる工場の露出とモデルさんへのストロボでの露出を合わせるために、本番撮影前に何度もリハーサルをしました。

veilさん、長い時間お付き合いいただき本当にありがとうございました。


@levraivert    veilさん

これはお別れ前の徳山駅でのカット
こういう夜景ポートレートはお手軽でいいです…

まとめ

工場夜景ポートレートを成功させるポイントは次の通りです。

・背景はF8〜F11で撮る

・人物が止まれる1〜2秒以内にSSを設定

・背景露出=ISO × SS

・人物露出=ストロボの閃光

・環境光が当たらない位置に立つ

・ISOアップ時はストロボの出力を養生テープで減光

・星空ポートレートとは別物

工場夜景の迫力と人物の静けさが融合した瞬間、
唯一無二のポートレートが生まれます。
ぜひ挑戦してみてください。

veilさんのInstagramアカウントはこちら
@levraivert 

今回の撮影に使用した機材です




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